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日々の出来事や萌え語り等。偶に鬱状態になるので御注意下さいませ。
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冬も本格的になった頃のある日。
「あ」
獏良が買い物の帰りに声を漏らす。
目の前に白いものがチラホラと降っているからだ。
「雪だ」
獏良は空を見上げると、その白い物体を見詰た。
不意に背後から声をかけられる。
『何だこりゃ?』
今迄見た事がないのだろうかと疑問を持った獏良が尋ねる。
「雪だよ。雪、知らないの?」
『こんなモン見た事も聞いた事もねぇよ』
素気ない返答に「そっか」と返すと自宅へ歩を進めた。

帰宅後、獏良は夕飯の支度していた。
もうすぐ1年が終わろうとしている。今年遣るべき事は大体片付いた。
後は年が明けるのを待てばいい。
夕飯を食べて風呂に入り、自室でシナリオを考えているとある事を思い出した。
「そういえば・・・・」
机の引き出しを開け、其処から箱を取り出す。
飾り気のない銀色の金属でできた箱だ。
その蓋を開ける。中には死んだ妹の天音と自分が写った写真があった。
そしてその写真を取り出し、じっと見つめる。
幼い頃、雪が降り積もれば天音と雪合戦や雪だるま、
雪うさぎを作ったりして遊んだものだ。
白銀の綺麗なキャンバスを自分達で飾る・・・
それがあの頃の自分達の遊びっだった・・・
けれど天音はもう居ない・・・もう居ないのだ。
窓の外を見ると雪はすっかりアスファルトを白く染めていた。
またあの頃に戻れるなら今すぐに外に飛び出して雪遊びをしたい。
天音と一緒にただ無邪気に遊びたい・・・
『何見てんだよ?』
獏良の様子が可笑しい事を察してかバクラが話しかけてきた。
「何も、見てないよ」
『嘘吐け』
獏良は俯き加減に言った。
「昔の事、思い出してたんだ・・・」
『昔の事?』
獏良がコクリと頷く。
「昔ね、雪が積もったら妹の天音と良く雪遊びをしてたんだ」
バクラは獏良の記憶を覗く事が出来る。
当然天音という妹が居た事も知っている。
『で?その天音とまた遊びたいってのか?』
「・・・うん・・・そんな感じかな。」
普段バクラに言い当てられるとそれに対して否定する獏良が素直に答える。
何か企んでいるのではないかと獏良の顔を覗き込む。
獏良の目には光は無く、ただ呑みこまれそうなほどの闇を写していた。
バクラは一瞬目を疑った。
普段闇を嫌う獏良が自分の瞳に闇を宿すなんて・・・・
『・・・何企んでやがる?』
すると獏良の俯いていた顔があげられる。
「何も企んでないよ」
感情のこもらない声にバクラは不信感を抱いた。
今の獏良の目は自分に似ていると思った。
だが、普段闇に染まらないと言っている獏良が自ら闇に染まるとも思えない。
嫌な予感がして獏良の方を見る。
獏良は無表情のまま自室を出る。それにバクラも付いていく。
玄関の扉のノブに手を掛けた時、バクラが咄嗟に体の主導権を奪う。
一瞬の出来事に獏良の虚ろな瞳が見開かれた。
「何するの!?」
『手前こそこんな時間に何処行こうとした!?』
獏良の目が再び虚ろになる。
「別に、何処でも良いじゃない」
『良くねぇよ!』
バクラの怒声に視線をバクラに移す。
「・・・何で?」
『こんな時間に寒い中何処に行く気だったか知らねぇがな、
お前を危険な目には絶対に遭わせねぇ!絶対に!!』
その言葉に獏良の視線が冷たくなる。
「・・・・如何して?貴方は了の何だって言うの?」
『!?』
それは明らかに獏良ではなかった。
正体不明の相手に問う。
『お前、誰だよ?』
バクラの言葉に獏良の口が開く。
「獏良天音」
『・・・何だと?』
獏良天音、それは獏良了の妹・・・・もう死んでいる筈の人間・・・
「貴方は誰?如何して御兄ちゃんを苦しめるの?」
『んな事動でも良いだろ・・・』
バクラの言葉に天音が怒声を発する。
「動でも良くないッ!!」
『!?』
天音はバクラの方をじっと見つめたまま続ける。
「御兄ちゃんは貴方の道具じゃない!!私は傍に居る事も出来ないのに・・・」
天音は半透明の拳をバクラに突きつけた。
「貴方なんかに御兄ちゃんはあげない!傷付けさせない!!」
その言葉とともに体の主導権が天音に移った。
『何しやがる!?』
天音は玄関から離れ、ベランダへ向かった。バクラも追う。
ベランダに出ると其処から外に広がる銀世界を眺めている。
「綺麗ね。御兄ちゃんみたい」
『・・・・・』
「雪って冷たくて、ふわふわしてて、触ると溶けて、不安定で、でもそれが綺麗で・・・
何だか御兄ちゃんに似てて私は好き」
天音は少し頬を赤らめながら楽しそうにそう言っている。
納得は出来る。だがそれとこれと何の関係があるというのか?
すると天音はベランダの手すりに手をかける。
「私ね、御兄ちゃんの事、好きなの。ずっと見守ってたの・・・でも・・・」
言葉が途切れた。
「貴方の所為で御兄ちゃんは傷付いた・・・大切なものを失った・・・」
『・・・それが何だって言うんだよ?』
天音は首から千年リングを外すとバクラにそれを見せた。
「これ、貴方にとって大切なものなんでしょ?」
『ああ』
千年リングは大切だ。が、その言葉の意味が今一(いまいち)解らない。
だから何だと言うのか?千年リングを使って脅す気なのだろうか?
天音はニンマリと笑って言う。
「じゃあ、御兄ちゃんとこれ、どっちが大事?」
『!?』
想定外の言葉に動揺する。天音はそれを見て笑う。
天音の口の端が吊り上る。
「時間をあげる。二つに一つ、どっちか選んで。
御兄ちゃんか、このペンダントか・・・」
そして天音は笑み浮かべていた顔を真顔にする。
『・・・一体、何の意味があんだよ?』
「良いから早く選んで。貴方に質問する権利は無いの」
バクラの眉間に皺が寄る。
こんな小娘に命令される権利などないというのに。
一つ言える事は、今目の前に突きつけられている問い
に答えなければならないという事だ。
そして返答次第ではどちらかを失う事になる。
「ねぇ、どっち?」
痺れを切らしたのか天音が聞いてくる。
バクラは数秒考えた後質問に答える。
『両方だ』
「・・・話、聞いて無かった?どちらか一つって言ったでしょ?両方じゃ駄目」
苛立たしげに天音が言い返す。
『両方だ。選べるわけねぇだろ』
「選びなさいよっ!!」
天音の怒声が響く。
『じゃあ逆に聞くがどっちか選んだら如何する心算だ?』
天音の表情が曇る。手すりにかけた片手で体の重心を移す。
「こうするの」
『!?』
天音が何をしたいのか察したバクラは急いで天音の腕を掴もうとした。
「御兄ちゃんを返して貰うね」
そう言うと天音の体が宙に浮かんだ。
そして勢い良く落ちる。













『ったく面倒な事しやがって』
バクラはベランダの外側の壁部分を掴んでいた。
左手には血がにじんでいる。
右手の千年リングを落とさなようにする。
今、体の主導権はバクラにあった。
天音が落ちる瞬間、強引に体の主導権を奪ったのだ。
血の滴る左手で力強く体を引き上げようとするが上手くいかない。
この細い体では無理だと悟ったバクラは下の階のベランダに飛び降りた。
左手には傷が出来ていて、血が幾筋もの筋を作って垂れている。
このベランダの部屋の人間はもう寝ているのか電気が消えている。
助けを呼ぶ事が出来ない。
『チッ』
舌打ちしつつベランダから廊下までゆっくりと狭い手すりの上を歩く。
廊下に着いたところで其処に入り、自分の部屋がある階まで歩く。
「如何して助けたの?」
背後から半透明になった天音が問う。
『何度も言わせんな。俺様にとってこの体もこのリングも大切なモンなんだよ』
天音はじゃあと続けて言う。
「御兄ちゃん自身は動でも良いって事?」
その言葉にバクラの足がぴたりと止まる。
確かに獏良了の体は大切で、獏良了自身など動でもよかった。
体があればその体の主など邪魔なだけだ。
それならそう言えば良い。だが・・・・
バクラの中に何か得体の知れないものが渦巻く。
数分の沈黙。
『・・・獏良了自身も俺様にとっちゃ掛替えのない存在だ。』
自分の口から出た言葉が本当なのか嘘なのか、今は解らない。
バクラの言葉に意外そうな顔をした天音が口を開く。
「そうなの。なら、御兄ちゃんを任せられるね」
天音はさっきまでの冷たい表情でも、バクラを嘲笑うでもなくニッコリと笑う。
さっき見せた笑顔とは違う、温かいものだった。
「私、ずっと見てるから。今度変な事したら許さないから」
『そうかよ』
天音に言い返すバクラに表情は無い。
だがそれでも天音は笑う。体がゆっくりと消えていく。
そしてあっという間に天音はその場から消えていた。
『フン』
自分の部屋へ向かおうと階段を上る。
このまま此処に居ても寒いだけだ。


「あれ?」
獏良が目を覚ます。
時計の針が午前3時を指している。
どうやら年が明けたらしい。
郵便局に行こうとしていた筈が、それからの記憶が全く無い。
不意に左手に痛みを感じて左手を見る。
「・・・何これ?」
左手には包帯が巻かれている。恐らくバクラが巻いたのだろう。
獏良は溜息混じりに玄関に向かう。
(警察に見つからない様に行こうっと)

雪が降り積もる道を歩き、そして郵便局のポストに書いた年賀状を入れる。
今年も矢張り千年リングに宿る存在に振り回されるのだと思うと溜息しか出ない。
自宅に戻って天音への手紙を書く。
正月は特に実家に帰るでもなく獏良にとっては動でもよかった。
雪が降る空を無意識に見上げ一筋の涙が滴る。
「・・・天音・・・」
 

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学生たちが列を作って走っている。
今日は童実野高校全校生徒参加の校内ロードレースだ。
獏良は自分のペースを保ちつつ、折り返し地点を目指した。
「あと、少し・・・」
そう呟くと声がした。
『何でそんなに頑張ってんだよ?』
バクラだ。半透明の姿で獏良を見下ろしている。
宙に浮いているから自然と見下ろすのだろう。
「・・・・別に・・・頑張ってなんか、ないよ」
小さく呟いた。だがバクラにはハッキリとその言葉が聞こえていた。
『へぇ?頑張ってなきゃ一体何なんだ?成績でも稼いでんのか?』
「そんなんじゃ・・・ないよ・・・」
走っているせいか言葉は途切れ途切れだ。
白い吐息、白さを増した肌・・・冬の儚さが良く似合う・・・そうバクラは思った。
細い足がスピードを落とすまいと動き続けている。
「獏良君!」
「・・・え?」
後ろから遊戯が走って来る。城之内や本田、杏子も一緒だ。
「皆・・・」
「獏良君、一緒に走ろ!」
遊戯に誘われる。一緒に走りたい・・・だが・・・
「御免、一人で走りたいんだ・・・」
突き放すように言う。
「そっか・・・邪魔して御免ね。」
遊戯の表情が曇る。獏良も「御免」と返してスピードを少し上げて走って行く。
出来れば今は一人で居たい。
ずっと望んでいた事なのに、自分から突き放すなんて・・・
「遊戯君・・・」
呟くとバクラが現れた。
さっきの会話に乱入しなかったかと思えば今更何を言う心算なのか?
『御友達を突き放すなんて、随分冷たくなっちまったなぁ?宿主様よぉ?』
バクラは獏良を見て笑う。少し突き放しただけで別に嫌いになったわけじゃない。
友達が居ても、一人になりたい時だってあるのだから
さっきの様な事があるのは当然だ。
「冷たくなったわけじゃないよ・・・一人になりたいだけ・・・」
『なら何で千年リングは外さないんだ?』
「父さんから貰った・・・物だから」
理由を言えばそれだけだった。バクラの事は今でも好きになれない。
自分や友達を殺そうとしたのだから。
『本当にそれだけか?何か他に理由があるんじゃねぇのか?』
「何も無いよ」
獏良の言葉にカチンと来たバクラは鼻を鳴らしてリングの中に消えていった。
そう、千年リングを着けたままで走らなければ意味がない。
この体に身につけている限り逃げ切れないのは当然だ。
だから、今、身につけて走っても動揺しない様に
校内ロードレースを練習に使ったのだ。
実際、走っている間、バクラに対する恐怖心は無かった。
何も考えず、只走るだけだ。

ゴール地点に到達した獏良は汗をかき、息を荒げて校舎に向かって歩く。
思ったよりも早くゴール出来た筈なのに何故か喜べない。
教室に着くと体操服から制服に着替える。
席に座ってクラスの皆がゴールするのを待っていると・・・・
『随分お疲れみたいだな?』
バクラが現れた。獏良は鬱陶しくなり顔を伏せ、机に突っ伏した。
「僕に、構うな・・・」
『何だ?反抗期かぁ?随分生意気な口ききやがって』
バクラの声が荒くなるのが解る。
だが、今バクラに構っているほど暇ではない。
『手前、俺様に何か隠してるだろ?』
一瞬ドキッとしたが獏良の表情はバクラから見えない。
「・・・・別に・・・」
確かに隠し事はしている。それはバクラ以外にもだ。遊戯にすら打ち明けていない。
獏良はバクラから逃げ切りたいと思う一心で走っていた。
だがその他に忘れてしまいたい事もあった。
バクラの手によって昏睡状態に陥った嘗ての友人の事だ。
遊戯に助けて貰ってから昏睡状態だった友人達も意識を
取り戻したから良いのだが、それでも自分の中の罪悪感は消える事は無かった。
寧ろどんどん重くなっていくような気がした。
だから、それを少しでも忘れたくて、只我武者羅に走っていただけの事だ。
「僕なんて居なければ良かったんだ・・・」
ぽつりと呟く。
その言葉が聞こえたのかバクラの片眉がピクリと動く。
暫くの沈黙の後、次々とクラスメイトが帰って来る。
(また、騒がしくなったな・・・)
冬が近づいているのだろう、獏良の体が僅かに震えた。
 

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「今日は何の日か知ってる?」
唐突に遊戯が獏良に尋ねる。
「え?何かあったけ?」
特にそれらしい行事があった覚えが無く、首を傾げて考え込む。
遊戯は真剣に考え込む獏良に笑顔で答える。
「今日はポッキーの日だよ!」
「ポッキーの日?」
「うん」と頷くと遊戯は鞄からポッキーの箱を取り出した。
そして箱の切り取り線をなぞって箱を開け、銀の袋を開く。
その中に手を入れ、ポッキーを一本掴んで獏良に差し出す。
「はいこれ!ポッキーの日だからあげる!」
「有難う!でもこれ、如何するの?」
貰ったは良いがこれを如何すれば良いのかは解らなかった。
この場で食べてしまうという選択肢もあったがそれで良いのかどうかも解らないまま
考え込むと遊戯が獏良のポッキーを取り返す。
「あ」
思いもしなかった行動に声が漏れる。
遊戯は少し悪戯な笑顔でこう言った。
「あのね、ポッキーの日って、これを食べちゃえば良いようなものだけど
それだけじゃ面白くないでしょ?だからね・・・」
そう言いながら遊戯はポッキーを口にくわえた。
「え?」
食べないのだろうかと疑問に思ったが、遊戯の手が獏良の手を引く。
気を抜いていたせいかあっさりと遊戯に引っ張られる。
遊戯が口ぱくで何かを言っている。咥えたポッキーが落ちないように慎重に。
「こ、の・・・ポッキー、に、齧り・・・付い・・・て?」
獏良の言っている事に頷くと遊戯は顔を近づける。
「え!?でも・・・・」
本当に齧り付いても良いのだろうかと思ったが遊戯の頬がプゥっと膨らむ。
それに気付くと獏良は急いでそれに齧り付く。
これからどうすのだろうと思ったが答えは遊戯が行動で示してくれた。
少しずつ咥えたポッキーを食べる。
何をすれば良いのか察した獏良は遊戯と同じ事をする。
次第に唇と唇が近づき、獏良が食べるのを止める。
最後まで食べ終えた遊戯がポッキーを咥えていて開けなかった口を開く。
「あー苦しかった!獏良君が早くしてくれなかったから!」
「ご、御免・・・でも・・・」
思い返してみると頬が赤くなる。
偶々放課後で教室に誰も居なかったから良いものの、
さっきの行動を想い浮かべると体中の体温が上がってしまう。
「ううん。僕も突然あんな事して御免ね。」
遊戯が少し暗い表情で言う。
「最後まで・・・食べなくて御免ね。でも・・・」
獏良が言いたい事を察した遊戯は獏良の頬に手を当てる。
「本当だよ!折角あげたのに・・・だから・・・」
「?」
遊戯のもう片方の手が獏良の頬にそえられる。
そしてゆっくりと遊戯の顔が近づく。
遊戯の行動に動揺しながらも抗うことも無く、ただ流れに従った。
二つの唇が触れ合う。温かい。
「ゆ、遊戯君・・・」
「御免、ファーストキスだった?」
「遊戯君こそ・・・」
そう言いながら互いに頬を赤らめる。
不意に遊戯が獏良の眼を見てこう言った。
「僕、獏良君の事好きだよ!だから、絶対負けないよ!!」
「え?」
獏良には遊戯が何を言ってるのか全く解らなかったが、
獏良の背後で意識体でその状況を見ていたバクラには
その言葉の意味が理解出来た。
勿論、遊戯の背後に意識体としてその状況を見ていた王様も
その言葉の意味を理解した。
「帰ろ。」
「うん?」
一人何も解らないままの獏良の手を引き、遊戯は教室を出る。
『器の分際で・・・俺様に宣戦布告とはな…』
ひっそりと闘志を燃やすバクラが遊戯と自分の宿主の後姿を見詰ている。闇人格×表人格女体化アンソロジー【右隣の女の子】 ばくらプチ告知サイト

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季節が変わってか急に寒くなっていた。
学校に着くまでは冷たい空気と風に耐えなければならない。
制服の下にも服を着こんではいるがそれでもやはり寒い。
歩くスピードを上げて少しでも早く教室に入りたかった。
風を遮るものがあれば少しはマシになるだろう。

昇降口には早足で教室に向かおうとする生徒が溢れていた。
獏良も下駄箱に靴を入れて教室に向かおうとすると背後から声がした。
「おはよ、獏良!」
「御伽君・・・・。おはよ」
御伽が獏良に歩み寄る。こんなに寒いのに良く元気なもんだ。
余り接点がないのもあってどう対処すれば良いのかも解らず黙り込んでいると
御伽が肩を掴んでニッコリ微笑む。
「こんな所に居ても寒いだけだし、行こう。」
「うん・・・。」
御伽に手をひかれ教室に向かう。
遊戯達はまだ来ていないのか教室には見当たらない。
自分の席に座ると荷物を置いて御伽が獏良の席に近寄る。
「あの、何か用?」
「いや別に。」
獏良の問いに即答すると獏良の顔をニコやかに見ている。
一体何が目的なのかと考えていると遊戯達がやって来た。
「あれ?獏良君と御伽君が一緒なんて珍しいね~」
「そう?いっつも一緒じゃん!」
「え?」
御伽の言葉に思わず声が漏れる。
「僕はそんなに一緒に居た覚えないけど・・・」
「冷たいな~教室でいっつも見てるんだよ?」
「え?」
今度は遊戯と同時に言う。
「あんなに見られても気付かないもんだね。獏良って鈍いんだな。」
御伽がからかうように言うと獏良の髪を撫でて自分の席に着く。
遊戯と目を見合わせながら言う。
「御伽君ってあんなだったけ?」
「・・・解らない・・・」

昼休み、弁当を忘れた事に気付き購買に行ってパンを買おうと列に並ぶ。
今日は人が多いから買うのに時間がかかりそうだ。
そんな事を考えていると肩を叩かれる。
「獏良!獏良!昼食なら俺と一緒に食べよ!」
「でも僕、お弁当忘れちゃって・・・」
「良いから来いって!」
強引に手をひかれ行った先は選択教室。誰も居ない。
御伽君は僕を窓辺の席まで連れてって其処に座るように促す。
僕は指定された席に座る。
御伽君は鞄からお弁当を取り出す。嫌がらせかと思った。けど・・・・
「はい。」
御伽君がお弁当を差し出す。
僕は受け取るべきか悩んだ。すると御伽君が弁当の蓋を開ける。
「いらないんだ?じゃあ俺一人で食べるよ」
意地悪な笑みを浮かべている。
訳が分からないまま黙っているとお弁当のおかずを
摘まんだ箸が僕の口に押し付けられる。
「んぐ!?」
「冗談だよ。半分子しようぜ。」
何時もの笑顔でそう言うとお弁当の蓋に僕の分を分けてくれた。
箸が無いと食べられないんだけど・・・
僕の考えてる事が解ったのか袋から割り箸を取り出して手渡される。
「食べなよ。俺、結構料理得意なんだぜ?」
「・・・有難う・・・」
確かにお弁当は美味しかった。
冷めてはいたが味は作りたてを食べるような味だった。
「旨いだろ」
「うん、美味しい・・・」
素直に答えたら得意げに「そうだろ」と言われた。
教室内の空気は冷えていたけど体は温かかった。
「お礼・・・何が良い?」
「ん?お礼?気にしなくても良いよ」
「そんなの駄目だよ!」
ガタッと勢いよく立ったせいか音が大きかった。
御伽君も驚いている。別に怒ってるわけじゃないんだけど・・・・
するとくすっと笑って御伽君も席を立つ。
「じゃあ、獏良の手作り弁当が良いな。」
「え?そんなので良いの?」
「うん。それで充分だよ」
そう言って選択教室を出る。

放課後、獏良は教室から窓の外を眺めていた。
5限から降り出した雨が止まない。
何時も持参している折り畳み傘を今日に限って
忘れてしまった為帰ることが出来ないのだ。
「困ったな・・・」
遊戯達には大丈夫だと言ったが実際はそうでもない。
雨がやむまで待とうと思ったが時間がたつにつれてどんどん酷くなる。
然も雨が降っているせいか空気も冷たくて寒い。
「・・・・寒い・・・」
ぽつりと呟くと背後から何かを被せられた。
「うわ!」
突然の事で思わず声が出る。
「驚くなよ。俺だよ」
獏良が振り返ると御伽が学ランを被らせていた。
「だって・・・突然だったから・・・」
御伽はふふっと笑って獏良を抱きよせる。
「え!?ちょっと!?」
「寒いんだろ?これなら少しは温かいだろ?」
御伽が何を考えているのか全く分からないがそうしていると本当に温かくて、
心の不安も掻き消してくれた。

暫くして雨が止んでいる事に気付き途中まで一緒に帰宅した。闇人格×表人格女体化アンソロジー【右隣の女の子】 ばくらプチ告知サイト

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もう直ぐ王との最終決戦が始まる。
全て順調に事は進んだ。
宿主である獏良了に古代エジプトのジオラマを作らせ、
後はテーブルに座りジオラマという舞台でシナリオ通りに踊れば良い。
そうすれば今度こそ終わる。
それなのに・・・

「宿主様に言わなくて良いのかよ?」
「・・・るせぇ」
其処はバクラの心の部屋。
闇色に染まったその空間にバクラともう一人、赤い盗賊が居た。
「好い加減素直になれよ。あの時言えなかった事・・・」
「動でも良いだろ。手前には関係ねぇ」
盗賊の言うあの時とはバクラが宿主を庇って神の攻撃を受けた時の事だ。
あの時、宿主の意識が朦朧として遊戯たちに部屋に運ばれていた時・・・
自分は宿主を、遊戯に優しく触れられる宿主を唯見ていた。
自分の方がずっと宿主の近くに居る筈なのにずっと遠くに居る様な気がして言えなかった言葉・・・
「動でも良くねぇよ!俺様はお前自身なんだ!
お前が何を考えてるかなんて直ぐに解るんだ。」
「黙れ」
「言わなきゃお前は絶対後悔する!お前が言わないなら俺が・・・」
「五月蝿ぇ!!」
バクラの怒声が響く。
それぐらい解っている・・・・言わなければいけないのも・・・・解っている・・・・
なのに言葉にしようとすると苦しくなって、声にならなくて・・・・
「・・・ああそうかよ!じゃあ勝手にしな!後悔しても知らねぇぞ!」
そう言って盗賊は闇の中に消えていった。

目が覚めると僕はソファで寝ていた。
服装も、黒いコートに私服。
こんなコート持ってたっけ?
最近記憶が曖昧で自分は何時表に居るのかさえ怪しい。
それも全てこの千年リングの所為だと言う事も今の獏良の記憶から消されていた。
ジオラマを作る時は意識はハッキリとしている。
なのにそれ以外は殆どが曖昧で途切れている。
そもそもこのジオラマやシナリオは自分の考えたものなのかと疑わしい。
気紛れに作ったのだろうか?それにしてはやけに力を入れているし・・・
疑問が残ったまま朝食を摂り、学校に行く。

もう一人の遊戯を探す記憶の旅、宿主は追い返された。
そりゃそうだ。俺を身に付けているんだからな・・・
だがこれも計算済み。
別れの時が近付いている。この宿主は今迄良く遣った。
俺は残った役割を果たせば良い。

王に負けた。
仲間の絆で邪神を倒すだと・・・
こんな展開、シナリオには書いてねぇ・・・
今迄宿主を騙し、傷つけた報いか?
それならせめて・・・・

「何だよ。あんだけ言わねぇとかホザいといて結局言うんじゃねぇか」
「そうしないと手前が成仏出来ねぇからなぁ?」
「言うねぇ。俺はお前だってのによ。」
盗賊がバクラに触れる。
「はぁ?」
「もう分割する事もねぇだろ?」
「・・・・そうだな。」
バクラの中に盗賊が戻っていく。本来在るべき場所へ・・・

バクラの消えるギリギリの状態、人格交代した宿主がテーブルに突っ伏している。
まだ眠っているのか目を閉じている。
その寝顔はまるで悪夢を見ていたかのような表情をしていた。
バクラは眠る宿主の心の部屋へ向かう。
目を覚ますその前に・・・
心の部屋で眠る宿主を抱き締め、耳元で呟く。
「                       」
全て返そう・・・・今迄取り上げてきたモノを全て・・・・
そしてバクラは消えた。

目を覚ますと僕は美術館の秘密部屋に居た。
遊戯君や皆が話しかける。
頭がボーっとして何を言ってるのか解らない。
一つ解る事があるとすればそれは‘‘何かが終わった‘‘という事。

美術館から帰って僕は自室のベッドに倒れ込んだ。
「明日は、皆でエジプトか・・・」
その言葉を口にした瞬間、何かが頭の中に流れ込む。
濁流のように・・・・
脳内に鮮明に蘇るそれは今迄バクラに誤魔化されてきた記憶。
「何で・・・・何で今更・・・」
涙が溢れ出す。
「何で居なくなる前に言ってくれなかったの・・・?」
涙が止まらない。
息が苦しくて、胸が痛くて堪らない。
「何で?何でっ?そんな・・・・今更・・・・・っ!」
心の部屋で言われた言葉、霞むハッキリとしない意識で彼が言った言葉・・・

今迄悪かったな・・・有難う、了。

僕は彼の故郷、エジプトに来ている。
全ての始まりと終わりの場所へ・・・
遊戯君とアテム君のデュエルが終わって冥界の扉が開く。
その扉の向こうに彼は居るんだろうか?
神殿が崩れ、脱出する時僕は何度も振り返った。
彼はもう居ないのに・・・ずっと望んでいた筈なのに。

神殿の外に出て皆と帰ろうとした時、彼の声が聞こえた気がした。

「皆に巡り会わせてくれて有難う・・・お疲れ様。」

そう言って僕は日本に帰った。
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