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日々の出来事や萌え語り等。偶に鬱状態になるので御注意下さいませ。
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生温かい風が頬を撫でる。
突き刺すような寒さが少しずつ無くなって行く代わりに
柔らかく、優しい風と日の光を感じられるようになってきた。
ふんわりと銀髪を靡かせて了は緩やかに歩を進める。
今日から了は高校生だ。
受験のプレッシャーに負けず、兄の通う高校に無事合格し
入学を今日に控えていた。
新しい制服に新しい学校、全てが真新しくて
了の心は期待で一杯だ。反面、不安も有った。
其れは学校に近付けばどんどん増していくもので
浮かれようにも浮かれ切れない妙な感じが、どうにも気持ち悪かった。

高校の校舎は思ったよりも大きく、綺麗だった。
新入生のクラス表をチェックしてから教室に向かい
入学式を終えて教室で簡単な自己紹介を行う。
了の席は最後尾で左隣の席は空席だ。
ふと、中学時代の事を思い出す。
了は中学生になるのに合わせてこの街に兄達と引っ越して来た。
地理感覚も無かった頃、転校先の中学が何処に有るのか解らず
途方に暮れていたあの日、ある少年が声をかけてきた。
目的地を丁寧に案内してくれてその少年には自然と好感を持った。
其の夜はまた会ってちゃんと御礼をしたいと思った程だ。
翌日転校先の中学校に行ってみると驚いた事に
先日道案内をしてくれた少年が同じ学校の、同じクラスの、隣の席に居たのだ。
また会いたいと思ってはいたがこんなに早く会うと感動よりも驚きの方が大きかった。
少年も驚いたようで、了を見るなり大きく眼を見開いてあんぐりと口を開いていた。
改めて御礼を含めた自己紹介をして、其れ以来は席の位置もあってか
頻繁に話すようになっていた。
中学の時は左隣に視線を向ければいつでも少年と目が合って
話して、笑い合ったものだ。
だが、少年も了も進学校が違っていた。
少年は少し離れた高校に進学し、
自分も兄の勧めで其の高校から少し離れた高校に進学した。
今、左隣に視線を向けても、其処には誰も居ない。
了は懐かしさと本の少しの寂しさに溜息を吐く。

高校の説明も終わり、帰り仕度を手早く済ませて校舎を出る。
校門に向けてゆったりと歩いていると背後から足音が近付いていた事に気付く。
ぴたりと足を止めて振り返ると、其処には2つ年上の兄、バクラが居た。
「お兄ちゃん、今帰り?」
「ああ。お前も今から帰るんだろ?一緒に帰ろうぜ!」
バクラが当たり前のように了の腕を掴んで引っ張る。
何時もの事の様に了も驚く事をせずに対応する。
「御免、お兄ちゃん。今日は一緒には帰れないの。」
「何でだよ?入学早々に寄り道でもすんのか?」
ズバリと当てられて内心焦るが顔には出さないようにする。
「そうだね。帰りに夕飯の材料買っておきたいから
近くのスーパーに寄ってから帰るよ。」
「なら俺様も一緒に行く。」
「駄目!お兄ちゃんが一緒だとお肉ばっかりになって
バランス崩れるから僕1人で行くよ!だから先に帰ってて!!」
バクラの肩眉が不機嫌そうに吊り上る。
了は面倒にならない様にバクラに言う。
「今日はお兄ちゃんがお風呂当番でしょ?
大きいお兄ちゃん、今日は大学の講義で帰り遅くなるみたいだから
ゆっくり休んででもらう為にも、お兄ちゃんが早く帰ってお風呂沸かしておいてあげて!」
「・・・兄貴の事なんざ知らねぇ。」
目に見えてバクラが不機嫌になっているのが良く解る。
了は困った様に少し考えて言葉を紡ぐ。
「じゃあ、僕も買い物が済んだら出来るだけ早く帰るから、ね?」
了の言葉にやや不満そうではあったが「わぁったよ」と答えて
すたすたと歩き出す。
了も微妙に距離を作りながら校門に向かう。

高校を出て、暫く歩くと何時も行く喫茶店が見えてきた。
了は喫茶店に入ると待ち人を探すべく視線を巡らす。
一番奥のテーブルに待ち合わせていた人物が居る事を確認して歩み寄る。
「城之内君!」
「お!獏良!!」
声をかけると少年、城之内克也が元気に名を呼び返す。
新しい制服を着た城之内を見て微笑む。
「制服、似合ってるね!高校は如何?」
「そうか?高校はまぁ普通って感じ?お前の方は如何よ?」
「ふうん、そうなんだ。僕の所も思ってたより普通だったよ。」
喫茶店のメニューを見ながら他愛ない事を話す。
中学時代に出逢った少年、とは城之内の事だ。
注文するものを決めて店員を呼ぶ。
夕飯が有るので軽食程度のものを頼んで
注文の品を頂きながら再び他愛ない話をする。
最後に城之内と話したのは中学の卒業式なので
さほど時間は経っていないのだが毎日話していただけに
たった数週間会わないと言う環境は御互い苦いものを感じた。
会えない間はメールで会話をしていたものの
矢張りちゃんと会って目を見て、声を訊いて話したいと思った。
高校の入学式が終わってから時間が有れば会おうと言われた時は嬉しかったし、
今こうして会えた事は本当に嬉しい。

喫茶店を出てからは近くのスーパーで一緒に買い物をした。
目的が一致している分、気を遣わずに済んで楽だった。
スーパーを出てから自宅に向かう時も楽しく会話をしていた。
不意に城之内が了の手を握る。
「・・・良い、んだよな?」
城之内の言葉に一瞬何の事だか理解できないと言った表情を
浮かべかけて「ああ!」と短く城之内の言いたい事に気付く。
「うん、良いよ!」
とびきりの笑顔で返事をする。
城之内の頬が少し赤くなっている。恐らく自分も赤くなっているだろう。
そんな事を思いながら歩調を合わせて歩き出す。
周囲には打ち明けていないが、了と城之内は中2の冬から付き合っているのだ。
其れを知っているのは同じクラスの数人のみで
お互いの家族すら紹介し合っていないのだ。
其の為会う時は自宅以外の、家族と遭遇し辛い場所で会っている。
家庭の事情をお互いに抱え込んでいる事もあって
其の事に不満を持つ事はなかった。
中学時代の時の様に毎日顔を合わせる事はないが
偶にでもこうやって時間を見つけて会えるんだと思うと苦では無かった。
こうやって城之内と手を繋いで歩くのは何日ぶりだろうと記憶を辿っていると
城之内が切羽詰まった声で言う。
「あのよ、獏良・・・」
「ん?何?」
「キス、して良いか?」
「あ・・・えっと・・・うん、良いよ。」
繋いだ手により一層力が籠る。
付き合い始めてからもう1年が過ぎようとしているのにも関わらず
キスはした事が無かった。
手を繋いだり抱き合ったりならまだあったがキスをしよう、とは
どちらからも切り出さずにいた。
だから不意に投げかけられた城之内の言葉に驚いた。
了の承諾に小さく歓喜の声を上げた城之内が了の体を抱きよせる。
流れに身を委ね、良く有るドラマと同じ様に目を瞑る。
数秒程の間を置いて互いの唇が触れあった。
短いキスの後、唇を離してお互い目のやり場に困ったような表情を浮かべる。
「あーっと・・・突然悪かったな!」
「う、ううん!全然大丈夫だから!気にしないで・・・。」
気恥ずかしさで体中が熱い。でも、何処か心地良い。
了は城之内に視線を向け一呼吸置いてから言う。
「今日は有難うね!久し振りに会えて、凄く嬉しかった!!」
了の言葉にまた城之内の頬が赤くなる。
「お、俺も!獏良に・・・了に会えて嬉しかった!」
初めて名前で呼ばれて今度は了が頬を赤くした。
顔を赤くし合っているのが可笑しくて2人で笑う。
今は周囲に隠れるように付き合っているが
何時かきっとちゃんとした紹介を家族にして認めて貰おう。
そう、密かに思いながら別れを惜しむようにゆっくりと自宅に向かった。


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暗い部屋の隅で震える体を抱きながら獏良は嗚咽を漏らしていた。
「う・・・ぐっ・・・ひっく・・・・・」
日々もう1つの存在に怯え続ける事へのストレスと恐怖、
自分がその存在の言いなりで有ると言う情けなさ・・・
そんな思いが止めようも無く溢れ出す。
抱いた腕に爪を立て、出来得る限り声を抑えようと歯を食いしばる。
こんな姿を彼に見られてしまうのは嫌だ。
弱っている自分を見られたらまた嘲笑われて偽りの優しさで触れてくる・・・。
そんな事をされる位なら乱暴に扱われる方がまだマシだった。
嘘だと解っていても、優しくされると縋ってしまいたくなるのだ。
若しかしたら、今度は本当なの優しさなんじゃないかと言う
淡い希望を抱いてしまう・・・そんな自分が嫌だった。
そう考えているとまた涙が溢れてくる。
「何泣いてんだよ?」
突如聞こえてきた声に視線を上げると其処には褐色肌に赤い衣を纏った男が
此方に視線を落としていた。
「君は・・・・誰・・・・?」
「俺様か?俺様は盗賊王バクラだ!」
「盗賊王・・・、バクラ・・・?」
その名前を聞いて本の少し冷静さを取り戻す。
初めて彼と話した時、彼は自分が盗賊である事を主張していた。
そして彼の名も、バクラ・・・。
だが、普段目にする彼とは全くの別人である目の前の男を見つめる。
「ああ、そうだ。お前は獏良了、だな?」
「・・・・何で僕の名前を知ってるの?」
「何でって、お前は俺様の宿主だからに決まってんだろ?」
この言葉も以前、彼が自分に対して言っていた言葉だ。
彼との共通点を多く持つ目の前の男に意を決して問う。
「君は、僕を苦しめるバクラ、なの?」
目の前の男、盗賊王バクラの表情が曇る。
「なんつったら良いか・・・俺様もお前を苦しめるバクラも
同じつったそうなんだが全くの同一人物っつう訳じゃねぇんだ。
お前が言うバクラは俺様と闇を混合させた人格ってだけで
俺様自身じゃねぇんだ。彼奴は純粋な『闇人格』だ。」
「じゃあ、彼は君の偽物って事?」
「其れも違う。彼奴も俺様も両方本物だ。
俺様の記憶と闇が混ざって出来てるってだけで
ちゃんと個々として存在してるからな。」
「・・・何だかややこしいね」
目の前の男、盗賊王バクラの話に溜息を吐く。
彼は、自分に危害を加えている闇人格では無い。
そう思うと少しだけ気が楽になった。
「君は何時も何処に居るの?」
「心の部屋、あの闇人格の闇の中だ。こうして表に出られるのは大分久し振りだ」
「・・・閉じ込められてるの?」
「んー・・・まぁそんな感じだな」
「辛くはないの?」
「さぁなぁ?何か不自由するわけでもねぇし、そう感じた事はねぇ。
だがなぁ・・・・」
言葉が途切れて盗賊王の顔を覗き込む。
「如何したの?」
その言葉がスイッチだったかのように盗賊王の手が獏良の肩を掴む。
「え!?」
突然の事に驚く獏良を更に抱き寄せる。
状況が今一理解できずに獏良が混乱していると
盗賊王の声が耳元で聞こえた。
「苦しむお前を見てるだけで何もできないのが、辛いな・・・」
その言葉にドキッとする。
初めて会ったばかりの男にそんな事を言われたのは初めてだし
初対面の人間に抱きしめられるのも人生で初めてだ。
こんな時如何すれば良いのかと返す言葉に困っていると
盗賊王が獏良の顔を見つめる。
「そんな顔すんなよ。お前が辛そうなのが俺様も辛いんだ。
彼奴にあんなにされて・・・最近はちゃんと笑えてなかっただろう?」
言われ見れば確かに最近は彼からの恐怖で上辺だけでも笑えなくなっていた。
遊戯達にも何か有ったのかと良く聞かれる程に
表情が暗かったのだろう。
其れでも心配をかけたくなくて「大丈夫」と答えていた。
初対面の人間に其れを見抜かれてしまってまた涙が零れる。
「うぅ・・・ひぃ・・・っく・・・」
「大丈夫だ、俺様が居る。大丈夫・・・・」
自分より大きな腕に再び抱かれる。
暫しその腕の中で泣いていると心の中に溜まっていたものが
軽くなったのか気分が落ち着いた。
声を落ち着かせて盗賊王に視線を合わせる。
「君は、優しいね・・・」
「如何だろうなぁ?お前以外の宿主達にはこんな風には接し無かったぜぇ?」
「僕にだけ?」
「ああそうだ。何てたってお前は此の俺様が唯一惚れ込んだ宿主だからな!」
「えーっと・・・其れは如何いう意味?」
盗賊王の言葉に首を傾げていると満面の笑みを浮かべた盗賊王が
爽やかに答える。
「深い意味はねぇよ。まんまの意味だからなぁ」
そう言って盗賊王の姿は部屋の暗がりに消えて行った。
其処で獏良はふと疑問を持った。
彼が意識体なら何故自分に触れられたのだろうか、と。
盗賊王と話している間は全く気にしていなかったが
彼に触れられた箇所は温かかったし力強かった。
闇の中に幽閉されていた彼が意識体でも生身の体に触れられるような
特殊な力を得たと言うのだろうか?
何にしても彼の御蔭で大分心が楽になったのは間違いなかった。
振り返っても彼の姿は無く其処は見慣れた自分の部屋だった。
本の少しの笑顔を浮かべてベッドに潜り込むと
誰も居ない部屋の一角を見つめて「有難う」と呟く。
今日はもう寝てしまおう。明日は遊戯君達に笑顔で接しよう。
そんな事を考えながら獏良は深い眠りに着いた。闇人格×表人格女体化アンソロジー【右隣の女の子】 ばくらプチ告知サイト

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昔、御母さんからこんな話を訊いた。
6月に結婚した花嫁は幸せになれると言う、そんな話。
当時は夢の有る素敵な話だと思ったけど
今思えば私に幸せを分かちたいと思える男性が居ないので
正直関係ない事だと思ってた。
小さい頃は考えていなかったけど相手が居ないのでは
結婚する前に交際する事も出来ない。
なので6月は梅雨時だと言う認識しかない。
周りの女子は恋愛を充分に楽しんでいるのに
自分だけが浮いてる様に思えた。
だが、恋人が居なくとも死ぬわけではないし
自分に合わない人と無理に付き合う必要もないと思ったのだ。
そんな事を思いなが学校の廊下を歩いていると後ろから声が聞こえた。
「天音!」
「御兄ちゃん!」
其れは自分の双子の兄、了の声だった。
了は学校鞄を片手に持って近づいてくる。
「一緒に帰ろう?」
「うん」
了の言葉に答える。
私達兄妹は両親でも見分けがつかない位容姿が似ている。
でも其れは小さい時だけで今は体格に差がついてきていて
昔程見分け辛い訳でも無い。
天音にとっては其れが少々寂しく思えた。
兄との体格差はハッキリしているし声のトーンも幾らか変わっている。
此れが若しも同性だったらまだ寂しさもないのだろうが。
教会の前を通った時だった。
了が其処で足を止めて教会を見ながら言う。
「今月は多いだろうね」
「何が?」
「新婚さん」
「あ、そういえば6月だもんね」
兄との遣り取りで不意に今日考えていた事が脳裏を過(よぎ)る。
確かに自分は恋愛に関してそんなに興味は無いが
了はそういうことに興味が有るのだろうかと言う疑問が浮かんだ。
「了は、結婚するなら6月が良いの?」
「うーん、好きな人となら月日は関係ないと思うけど
相手の人が其れを願うなら僕はそうするよ。」
「そっか。・・・了は好きな人居る?」
「え・・・?」
了の眼が見開かれる。
自分でも何を言ってるているんだと驚いた。
こんな事を訊いて如何する?そう自分に訊き返す。
好きな人が居たとして自分は反応すべきか・・・
気まずくなって了から視線をずらして教会の方を見る。
数秒間の沈黙。
沈黙を破ったのは了だった。
「そうだね・・・好きな人なら沢山居るけど恋愛感情を抱く子は居ないよ。」
其の返答に天音が了の方に振り向く。
「そうなんだ。好きな人って友達とか家族?」
「うん、そうだね。でも皆平等に好きだし、飛びぬけて好きな人は居ないね。」
「・・・・」
天音にとってその回答は複雑なものだった。
了には恋愛感情を抱く相手は居ないが、同時に皆平等に好きと言うもので
つまり了の中に特別な存在は今の所居ないと言う事だ。
其れは天音も含まれており天音も了にとっての特別ではないと言う事だ。
天音の表情が曇った事に気付いた了が天音の手を握る。
「!?」
了の行動に驚いて思わず顔を上げる。
「お、御兄ちゃん!?」
天音の動揺を隠しきれない表情とは逆に了はとびきりの笑顔で言う。
「大丈夫、天音は可愛いんだからきっと素敵な御嫁さんになれるよ!」
「・・・御兄ちゃん、私とそんなに変わんないじゃん」
「う・・・・でも天音は僕と違って可愛くて明るくて活発だからきっと大丈夫!」
そう言いながら了が握っている手に力を込めて・・・
「若しも御嫁さんに行けなかったら、僕の御嫁さんになれば良いしね!」
と、とんでもない事を言ってきた。
天音の顔が紅潮する。全身の血が沸騰して噴出してしまう程体が熱くなる。
「なんてね、冗談だよ」
了の言葉に顔を上げると何処か寂しそうに教会を見て言う。
「僕には勿体無いね。天音みたいな良い子はもっと素敵な人と居るべきなんだ・・・」
了の言葉にハッとする。
其れは、紛れもなく自分が了に対して思っていた事だ。
了の様に優しく思い遣りのある人には自分じゃ勿体無くて
もっと素敵な人と居るべきなんだ、と。
そう思うと胸が痛くなって自然と了の手を握り返していた。
「私は、其れでも・・・良い。了の御嫁さんにならなっても良い。」
「え・・・?」
了の目を確りと見詰めて言う。
そしてゆっくりと了の手を引きながら体を近付ける。
「私にもまだ恋愛感情を抱く相手は居ないけど、
でも了が御婿さんになってくれるなら私は其れでも良いの」
「天音・・・?冗談、だよね?」
了の問いかけにニッコリと笑って答える。
「ううん、本気。此れは宣戦布告だからね?」
了と天音は兄妹で結婚なんて出来ないけれど
其れでも此の兄となら幸せを分かち合っても良いと思ったのだ。
恋愛感情に似ているが、何処か違う此の気持ち-・・・。
先刻迄白かった了の顔が本の少し赤くなって如何したものか、と言う表情になる。
徐々に近づいてくる天音の顔が返答を求めているのだと気付いて口を開く。
「そっか。じゃあ僕の御嫁さんは天音だね。結婚式は何時が良い?」
「6月!!」
元気よく了の問いかけに答えると其の儘了の唇に自分の唇を重ねる。
今、了はどんな顔をしているのかと思うと少し面白かった。
でも今はもう少しこうしていたい・・・出来る事なら此れからもずっと・・・。闇人格×表人格女体化アンソロジー【右隣の女の子】 ばくらプチ告知サイト

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3月3日、雛祭。
雛人形の前で了と天音が座り込んでいる。
「御雛様、綺麗だねー」
「うん、綺麗。私も御雛様みたいになれるかな?」
「なれるよ!!今だって可愛いんだし
大人になったら御雛様に負けない位綺麗になってるんじゃないかな?」
「もう、了ったっら!!」
了の言葉に照れた天音が目を伏せる。
ほんのりと頬が朱色に染まっているのが解る。
そんな天音が可愛くて了が笑顔になる。
「天音が健やかに成長しますように」
ポツリとそう言って顔を伏せた天音の頭を撫でる。
「な、何?了?」
「ううん、何でもないよ」
まだ顔が赤いが先程よりは落ち着いたようだった。
そんな時だった。
「でも、綺麗だけど早く仕舞わないといけなね、御雛様。」
了の言葉に天音が尋ねる。
「何で早く仕舞わないといけないの?」
「御雛様はね早く仕舞わないと御嫁さんに行くのが遅くなるんだって。」
「そうなの?じゃあ私は仕舞わないでおこう」
「え?如何して?」
「だって御嫁になんて行きたくないもの。ずっと了と一緒に居たいし。」
今度は了が顔を真っ赤にして「そ、そうなんだ。有難う」と照れ臭そうに言う。
この先何があってもずっと一緒に居たい、そんな思いが二人に有ったのだ。

 

「おい、何してんだ?宿主様よぉ」
バクラが獏良に問う。
その言葉に振り返りもせずに答える。
「見て解らない?雛祭だよ」
そう言って獏良は手際よく着物を羽織っていく。
一体何処にそんなものが有ったのかと疑問に思ったが
そんな事よりもっと気になることがある。
「んな事訊いてんじゃねぇよ。
俺様が訊きたいのは何で男のお前が
女物の着物着てんのかって事だよ。そういう趣味でも有ったのか?」
獏良の手が一瞬止まる。そしてゆっくりとバクラの方を向いて笑う。
「趣味、と言って良いのかな?良く解らないけど習慣みたいなものかな」
「へぇ?何でまたそんな習慣があんだよ?」
獏良は笑顔の儘帯を締めて口紅を薬指に付けて言う。
「妹の、天音の為にだよ。
ずっと一緒に居たいからこうやって御雛様の恰好をしてるんだ。
天音は今も僕の傍に居て僕を見てくれているから・・・」
「そうかい。まぁ然し随分と御似合いじゃあねぇか」
茶化すようにバクラが言う。
バクラの言葉など聞こえていないかのように
薬指に付けた口紅を自らの唇に塗る。
きっと、大人になれば御雛さまにだって負けない位
綺麗になっているであろう自分の妹を思い浮かべながら。
そうなる事を楽しみにしていた矢先に天音は死んでしまった。
ずっと一緒に居ようと約束したのに一緒に死ねない儘
今日迄生きてきたのだ。
獏良にとってそれは残酷なもので耐え難い苦痛でもあった。
だからこうして妹の経験する筈だった事を自ら経験してきた。
周りが自分をどう思っても構わない。
天音に約束を守れなかった償いが出来るのならどんな形でも良い。
不意に獏良がバクラに問うた。
「バクラ、私、綺麗?」
「ああ、綺麗だぜぇ?宿主様ぁ。」
からかう様に言い放ったバクラだが其れでも獏良は笑う。
自分の中に確かに天音らしさが有って其れを表現出来ていたのだから。
現実で死んでいても心の中では自分と一緒に成長しているんだと思っているから・・・
朗らかに笑う獏良の頬に涙が流れていたのをバクラは見逃さなかった。

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5月5日、子供の日。
その日獏良は普段家に余り帰らない父親からの
注文に対する答えに困っていた。
「了は何が欲しい?」
普段妹の世話をする了にとって
それは最も返答に困るものだった。
『何が欲しい?』という言葉は何処か魅力的で
曖昧なものだと思っていたからだ。
了は今年で10歳になる、所謂2分の1成人だ。
それだけに何を要求して良いのか困っていた。
妹の天音は颯爽とその返答をしてはしゃいでいた。
こう言う時、如何して自分はこんなにも決断力が無いのかと
幼い心に僅かな不満が湧いた。

自室から外の景色を見ると、子供たちが楽しそうに走り回っている。
自分と同じくらいの子供が無邪気に笑って・・・・
そう思うと自分は何処か他とずれているんじゃないかと思えてきて
胸が苦しくなる。
苦しくて、窓のカーテンを閉めようとした時だった。
コン。
何かが自分の部屋の窓に当たった。
窓の外には一人の少年が立っていた。
自分を見上げるその少年を見詰る。
すると少年はその場から走り去った。
「あ」
間の抜けた声を出して、つい追いかけていた。
自分でも信じられないうらいに一生懸命に。
気付いた時には公園に居た。
公園のブランコに向かって歩き出す。
「・・・・居ない」
「此処だ」
「!?」
呟いた傍ら現れた少年に動揺する。
物音もさせないで行き成り現れた少年を眼を丸くして見詰る。
少年はそれが可笑しくて笑いだす。
「君、誰?」
不審に思いながらも少年に疑問を投げかける。
「バクラだ」
笑い疲れた少年がそう言う。
「僕と、同じ名前」
ポツリ呟く。
「遊ぼうぜ」
そう言って了はバクラに手を引かれ、そのままバクラに身を委ねた。

バクラという少年は兎に角乱暴で無茶苦茶な少年だった。
了の腕を引っ張りながら走り回る少年。
途中危険な目に遭っても平然とする少年・・・。
辿り着いた場所は草木が生い茂る森の様な所に
佇む古ぼけた洋館。
バクラは屋敷の扉を蹴り飛ばして中に入る。
「着いたぜ」
そう言って了を屋敷に入れる。
「バクラ君って、乱暴だね」
「ほっとけ」
自然と出た言葉だった。
バクラは笑いながら屋敷の階段を上り出す。
了は離される気配のない左腕を眺めて溜息をする。
必要以上に力強く掴まれた左腕は感覚を無くして
痺れ始めていた。
階段を登り終えて一つの部屋に入れられた。
部屋の中は外から見るより片付いていた。
只、不自然なほどに綺麗だった。
まるでこの部屋だけが時間に置き去りにされたかのような
錯覚に陥る。
「座れよ」
バクラが了をベッドに座らせる。
了は黙り込んだまま座る。
「君は、何時まで僕の腕を握ってるの?」
「嫌か?」
了は不思議と疑問を口にしていた。
バクラは了の大きな瞳を覗き込む。
「ううん、嫌じゃないけど・・・・何でかなって思って」
了の言葉にバクラは軽く笑う。
「手ぇ握るのに理由なんて要るのか?」
バクラは若干困った様な笑みを浮かべて尋ねる。
了はバクラの言葉に如何返せば良いのか悩む。

数分ほどの沈黙、了は何時の間にか眠っていた。
眼を開くと矢張りバクラは自分の腕を掴んでいる。
器用だな、と感心した。
体を起こそうと体勢を変えようとした時だった。
不意に腕を引っ張られ、ベッドに再び倒れ込む。
「わっ」
思わず出た聲に自分でも驚く。
今日の自分が自分じゃない様な感じさえする。
「起きたのか」
ベッドに倒れ込んだ了をバクラが見詰る。
「来いよ」
バクラは勢い良く起き上がり了の腕を
掴んだままベランダへと歩き出す。
気付けば空が闇に包まれ、星を鏤めている。
「・・・綺麗」
自然とそう呟く。
「だろ?」
確認するようにバクラが言う。
ほんの少しの間を置いて了は訊き忘れていた事を聞く。
「君は、如何して僕が名乗りもしてないのに、僕の名前知ってるの?」
一瞬驚いた表情をしてバクラは眼を細める。
それは笑っているのか怒っているのか何とも言えない表情だ。
「お前、本当質問が多いな。こう言う時くらいそんな疑問は仕舞っとけよ」
「だって・・・」
言葉を遮るようにバクラが続ける。
「俺はさ、情報を集めるの、得意なんだぜ?だからお前の事だって知ってる」
「知ってる?」
ああ、と応えた後了の私情を口にする。
ゲームが好きな事、妹の世話に付きっ切りだと言う事、
中性的な外見の為、女の子と間違われる事から
自分の外見にコンプレックスがある事などを得意げに語り出す。
「・・・・バクラ君は、何でも知ってるんだね」
若干引き気味に言う。
バクラは尚も得意げに「だろ?」と応える。
バクラという少年は自分の事なら何でも解るんじゃないかと
不安になる。
「了、生きる事は楽しいか?」
不意に訊かれ、半ば動揺する。
「うん、楽しい。楽しくない時もあるけど・・・」
だろうな、とバクラが言う。
「けどさ、楽しくない事もあるからこそ楽しい時
がより楽しく感じられるんじゃないか?」
「・・・?うん」
その言葉は何処か寂しげに聞こえる。
「だからさ、こんな些細な切欠でも自分の思った事を
素直に打ち明けてみろよ」
バクラの言葉に思考が停止する。
僕が普段言えない事・・・思っても口に出来ない事・・・・
考えて体が震えだす。
瞼が熱くて、胸が苦しくてその場にへたり込みそうになる。
今迄心の奥底に仕舞っていた本心が、込み上げてくる。
ずっと溜め込んでいた自分の本心。
「僕・・・はっ・・・僕は・・・・」
言いたくても言葉にならなくて、涙が溢れ出す。
「言ってみろよ」
「僕は、もっと、御父さんや御母さんに見て・・・貰いたい
・・・甘えたいんだ・・・・っ!」
途切れ途切れに吐きだした言葉。
バクラは了の体を撫でる。
「そう、もっと素直になっても良い。お前は充分過ぎるくらい耐えたんだ」
了が落ち着いてきたとき、バクラは「帰るか」と再び了の腕を引っ張る。

家まで送り届けられ、お礼を言って別れた。
両親は勿論心配していた。妹は泣き疲れて眠ってしまったそうだ。
「了、こんな時間まで何処にいた!?」
「御免なさい」
短く謝罪する。
「まぁ良い。了が無事ならそれで・・・」
「御父さん、御母さん」
了の言葉に了の方を振り返る。
「何だ?何処か痛いのか?」
「ううん。あのね、僕御父さんと御母さんに御願があるの」
ずっと溜め込んでいた、仕舞っていた気持ち。
それを口にすると、両親は笑顔で了を抱きしめた。
それを見ていたかの如く獏良家の前に立つバクラという少年は
口元を釣りあげ、だが穏やかに笑う。
「良かったな、了」

 

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プロフィール
HN:
723
年齢:
26
HP:
性別:
女性
誕生日:
1992/06/25
職業:
社会人
趣味:
御絵描き・読書
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