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日々の出来事や萌え語り等。偶に鬱状態になるので御注意下さいませ。
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爽やかな朝。
バクラは気持ち良く目を覚ました。
隣ではリョウが眉間に皴を寄せて唸っている。
昨晩の仕返しがきいたのかぐったりと横たわっている。
目を覚ます気配のないリョウの髪を軽く撫でて食卓に向かう。
偶には自分で何か作ってみるのも良いかもしれない。

数分後、絶望的な程まともなものが作れないと言う状況に
手が止まってしまった。
リョウが毎朝毎晩作ってくれている様な
美味しそうな料理が作れないのだ。
思い起こせば料理なんてした事すらなかった。
今迄食事は街の店で済ませていたから料理をする事なんて考えてすらいなかった。
盗賊としての仕事がら手先の器用さにはそこそこ自信が有ったのだが
今の状況を見て其の自信も無くなりかけていた。
そんな時寝室から物音がして、其方に視線を向ける。
リョウが目を覚ましたらしく食卓に顔を出す。
そして此れでもかと言う位目を見開いて此方を見ている。
解ってはいるが、目に見えてそんな反応をされると傷付く。
「よぉ、起きたか?」
「あ、うん。おはよう・・・」
バクラに声を掛けられて我に返ったのかビクリと体が飛び跳ねる。
本当に解り易い奴だなと思いながらリョウの方を見詰めていると
無言でリョウが近付いてくる。
そして食卓に無造作に並べられたものを一口含む。
「・・・此れ、見た目よりも美味しいよ?」
リョウの言葉にバクラの表情が変わる。
「本当に旨いか?」
「うん、見た目はアレだけど・・・味は結構普通だよ。」
「そ、そうか」
リョウは思ったよりも物事をはきはきと言うタイプらしく
言っている事は確かなのだが胸に刺さるものが有った。
最早、下手物(げてもの)と言っても不自然ではない位に
ドロリとした料理を口にする。確かに見た目の割には旨いと思った。
食欲をなくすような見た目だったのが残念ではあるが
食料を無駄にしたくはないので全部食べることにする。
リョウは見た目を気にすることなく次々と食べているようだ。
あの体の何処にそんな大きな胃袋が有るのかと言いたくなる。


朝食の後、リョウは妙に上機嫌だった。
あの後バクラは出掛けてしまったので今は1人で家に居る。
今迄食事はリョウが作っていたからバクラに作ってもらう事など無かった。
だからこそ嬉しかった。
料理はするのも好きだが、誰かに作ってもらうのも好きだった。
後者に関してはそう滅多にある事では無い。
昨晩のバクラからの仕返しで疲労感も取り切れていなかったので
起きたら文句を言ってやろうと思っていたらあの状況だったのだ。
何時も確りしているバクラがあんなに料理に手古摺るなんて、と思うと
喉元迄来ていた文句の言葉も呑み込んでしまえた。
男料理、と言って良いのだろうかと思うような見た目だったが
味は普通位の出来だった。
恐らくちゃんと教えればもっと美味しいものが
作れるようになるんじゃないだろうかと思う。
バクラの作った料理を片づけて、家事をして
余った時間は少し眠ることにした。

リョウが目を覚ます頃にはすっかり日も暮れていた。
随分長い時間眠っていたようで、気だるさの残る体を無理矢理に起こす。
バクラが帰ってくる迄に夕飯の準備をしておかなければと食卓に向かう。
数分後、バクラが帰って来た。
今朝の沈んだような表情は何処へやら、今はニコニコと眩い笑顔を浮かべている。
「御帰り。如何したの?何か良い事でも有った?」
バクラの笑顔の理由が気になって、声を掛ける。
するとバクラは片手に持った袋の中をリョウに見せる。
「凄い・・・如何したの?此れ。」
袋の中には色んな食材がぎっしりと入っている。
料理好きとしては腕が疼く光景だ。
「今朝のリベンジをしようと思ってな。街で仕入れてきたんだ。」
「へぇ、そうなの?でももう夕飯出来てるよ?」
「明日だ。明日の朝こそちゃんとした喰いもん作ってやるよ!」
そう言いながら袋を置くと食卓に並べられた料理を食べ始める。
朝から今迄の数時間に一体何が有ったのかと訊きたくなるような心境だ。
だが、あれだけ言うのだからきっと明日は凄いものを作ってくれるのだろうと
期待に胸を膨らませながら夕飯を食べる。

翌朝、昨日の朝とは比べ物にならない位の料理が出来上がっていた。
比べ物にならないとは言っても下手物の様な見た目から
普通のシンプルな料理の見た目に変わっただけなのだが
昨日の今日で此処迄成長したのかと思うと驚くばかりだ。
「リョウ、食って見てくれ!」
バクラに促される儘、料理を食べる。
「・・・っ!美味しい!!」
心からそう思った。
昨日と唯一同じだった、見た目のよりも味が良いと言う部分は
今日も同じのようだ。其れでも成長が早い事に変わりはない。
バクラの料理の出来に感動したリョウが目を輝かせて言う。
「凄い!昨日の今日でこんなに成長するなんて!バクラ君天才だよ!!」
そう言われて照れながら「当たり前よ!」と返すバクラ。
昨日よりも明るく朝食を済ませて、
バクラがリョウに向きな直る。
「リョウ、あのな・・・」
「何?バクラ君?」
「外に、出てみねぇか?」
バクラの言葉にリョウが一瞬固まるが、次の瞬間その瞳に光が差す。
「え、良いの!?僕、外に出られるの!?」
「ああ、但し俺様と一緒に、だがな。」
「うんうん、良いよ!1人よりもバクラ君と一緒の方が楽しいもんね!」
リョウの言葉にバクラの顔が赤くなる。
「そ、そうかよ・・・で、明後日辺りに仕事が一段落するから
明後日一緒に街にでも行ってみねぇか?」
「うん、行くよ!明後日かー、楽しみだなぁ!!」
リョウは今迄にない位はしゃいでいるようだ。
其れも当然だろう。
今迄外に出る事を禁じていたのだから。
以前の死霊との会話で外に出てもリョウは死霊に殺される事はないと解って
仕事中ずっとリョウと一緒に外に出る事を考えていた。
想像以上に喜んでもらえた事に満足して
その日は当日の事を思い思いに語りあっていた。
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「行ってらっしゃい!」
「ああ」
そう言葉を交わしてから家を出る。
こうやって誰かに外出を見送られるのは何年ぶりだろう?
バクラは母親に見送られて出掛けていた過去の自分を思い出す。
あの頃は本当に毎日が楽しくて、世界が輝いて見えていた。
王宮に村を襲撃される迄は-・・・・。
今迄復讐の為に生きてきた。
何が有っても生き延びて王宮に復讐すると誓った。
そんな自分の誓いすら忘れてしまう程にリョウとの出逢いは
全てを狂わせてしまった。
或は狂っていた世界から引き戻された、だろうか?

そんな時クル・エルナの死霊達が囁きかけてきた。
『復讐を忘れるな』と・・・。
バクラにとって復讐とは生きる事の目標とも言えるものだった。
そして其れは自分だけの為でない事も解っている。
ざわつく死霊達に念を押す。
「若しもリョウに手ぇ出したら手前等(てめえら)を殺すからな?」
その言葉に死霊達は更にざわつく。
『如何いう心算だ?俺達よりもあの小娘を優先すると言うのか?』
「そんなんじゃねぇ。復讐はするし、リョウだって守る。其れで良いだろう?」
『ならば良いのだ・・・。1つ言っておこう。
俺達があの小娘を殺す事は不可能だ。』
「・・・如何いう事だ?」
『あの小娘が俺達に殺せるのであればもうとっくに殺している。
だがあの小娘に触れようとすると俺達は消えてしまうんだ。
まるでファラオの・・・神の加護を受けているかのようなそんな感じがする・・・。』
「ファラオの・・・?」
『あくまでそんな感じ、だがな。
だが若し本当にファラオに関連するのであれば
その時はお前があの小娘を殺すんだぞ?』
「俺様がリョウを殺す・・・だと?」
『そうだ。あの小娘を殺せるのは俺達の様な死霊じゃない。
生きた人間・・・バクラ、お前だ。』
「・・・可能性が有るっつうだけだろ?」
『そうだ。若しファラオに関係が有るのなら殺せ。或は利用しろ。』
「わーったよ。けど、ファラオに関係ねぇなら俺は何時迄もリョウを守るぜ?」
『好きにすれば良い。復讐さえ果たしてくれればそれで十分。』
家を出て数時間、死霊と話していたのは
リョウの事と最近忘れがちだった復讐の事。
「リョウがファラオの・・・」
バクラの中で何度も死霊達の言葉が繰り返される。
そんな事無いと思っても何度も何度も繰り返す。
考えていたくなくて歩くペースを速める。
今日はとある王墓の情報を集めに都に行くのだ。
其処に行けば此の考えもきっと頭から離れるだろう。



都で王墓の情報を調べている間も、情報を手に入れて家に帰る時も
結局ずっとリョウの事を考えていた。
自分は1度に幾つもの事が出来るんだなと感心しながら家に向かう。
何時もは楽しみな此の道のりも今日は苦痛に思えた。
リョウが嘘を吐いているのかも知れない、
バクラの仇であるファラオの差し金かも知れない。
そう思うだけで充分心は揺らいだ。
考えてみれば如何してリョウは今迄の記憶が無い?
如何して大人しくバクラの言うとおりにしている?
バクラの居ない間に実は家中を探っているんじゃないのか?
そんな疑念が湧いてきて頭を振る。
「そんな訳ねぇ・・・」
口でそう言っても心は不安で一杯だ。
リョウを知りたいと思っていた。
だが今は其れが途轍もなく怖い。
リョウの事を知って殺さなければならなくなったら
果たして自分は其れを実行出来るだろうか・・・・?

家に着く頃には辺りは真っ暗だ。
何時もなら夕方には必ず家に着いているのに・・・。
帰ってきた事を伝えるべく「只今」と言う。
だが返事が無い。
「・・・?」
様子が可笑しい。
何時もならバクラの声を訊きつけて出てくる筈のリョウが
出てくるどころか返事すらもしない。
不安になって室内をぐるりと見回す。
食卓には食事が置かれているが其処にはリョウの姿はない。
寝室を覗いてみるがリョウの姿はない。
此処はそう広くはないから他に隠れられる場所なんて無い。
ならば矢張り・・・
そう思った時だった。
耳を澄ませば控えめな寝息が聞こえてきた。
バクラは全神経を耳に集中する。
そしてゆっくりと寝息の聞こえる方向に歩きだす。
すると、暗い部屋の片隅でリョウが体を丸くして眠っていた。
暗い部屋の物陰に紛れるように其処で眠るリョウはこの上なく美しい。
リョウの寝顔に見惚れてしまってふと我に返る。
見惚れている場合じゃない。
如何考えても今の状況は可笑しい。
部屋に明かりもつけず、物陰に体を丸めて隠れて眠っているなんて事、
普通はそんな不審な事はしない。
矢張りリョウはファラオの差し金なんじゃないだろうかとまた考え出す。
何にしても本人を起こさねば何も解らない。
「・・・リョウ、起きろ」
「ん・・・・」
「リョウ!!」
「うわぁ!?」
中々起きないリョウの耳元で大きな声を出すと
リョウは体を跳ねあがらせて目を覚ました。
「あ、れ・・・?僕、寝てた?」
「ああ。つうかよ、真っ暗な部屋の、然も物陰に隠れて何遣ってんだ?」
リョウを起こして早々に疑問に思っていた事を伝える。
起きたばかりだからかリョウはまだ寝惚けている。
必死に眠気を追い払って思考を整理したらしく、バクラに視線を合わせる。
「あのね、僕普段遣らない事を遣って見ようと思ったんだ。」
「ああ。それで?」
「だから夕飯を用意して部屋の明かりも消して
暗い所じゃ見逃しちゃいそうな物陰に隠れて
バクラ君が帰ってくるのを待ってたんだけど・・・
気がついたら眠ってたみたいだね。」
リョウの答えにバクラは安堵と拍子抜けした事に対する脱力感を感じていた。
「バクラ君?」
「・・・いや、何でもねぇ。で、何でそんな事した?」
「其れは勿論バクラ君を吃驚させる為・・・わあ!?」
言葉が終わる前にバクラはリョウを抱き締めていた。
「良かった・・・本当に良かった・・・」
「え、あ?バ、クラ君・・・?」
動揺しているのかリョウの言葉はぎこちない。鼓動も早い。
リョウの存在を確認してバクラは本の少しだけ体を離す。
ばつの悪そうな顔でバクラを見詰めるリョウ。
「あの・・・心配掛けちゃって御免なさい・・・」
まるで悪戯をして叱られている子供の様な反応だ。
バクラは少しだけ表情を緩める。
「いや、良いんだ。お前が無事なら其れで・・・」
そしてグッと体を引き寄せられる。
「バクラ君!?」
バクラはリョウの耳元で擽る様に囁く。
「んじゃ、今から仕返しだ。」
バクラのからかう様な声にリョウの心臓が跳ねる。
「え、えぇ!?」
慌てふためくリョウを見て如何して遣ろうかと考えていると
矢張りリョウはファラオの差し金などでは無いと、確信を持ってそう思った。
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僕はいつも独りだった。
誰かに触れたり触れられたりと言う事はあまり無く
僕自身必要として居なかった。
何時から独りなのか、僕は何処から来たのか、
それらはすべて僕自身が思い出さない様に記憶を揉み消し、
書き変えているんじゃないかと・・・ふとそう思う事が有る。
不思議と僕も僕の事を知りたいと思う事は無かった。
唯、毎日が無意味に過ぎて行くだけで良くも悪くも僕に大きな変化はなかった。
何もない毎日が続くと思っていた。
けれども其れはあっさりと終わってしまった・・・
そう、僕が『彼』と出会ったあの日から・・・・。



今日もバクラは出掛けて行った。
数日前にバクラと出会って、一緒に暮らすことになって、
其れからバクラとの会話も増えて行った。
他人に触れられるのが怖くてずっと隠れてきていたけれど
バクラ君は怯えなくて良いと言ってくれた。
此処で自分の為に働け、そう彼は言った。
家の事をするのが面倒でこき使われているだけだと言われれば其れ迄だけど
今迄何もせず何も考えず過ごしていた自分にとっては
大いに興味深く、充実したもの様に思えた。
行く場所も帰る場所も無く、探す事すらもせずに
フラフラと彷徨うだけの日々を送っていた。
そんな自分が誰かの為に働いて、必要とされて・・・
そんな事を考えながら家事をしていると
あんなにも他人に触れられる事を恐れていた自分が
今ではそんな恐怖心すらも忘れている事に気付く。
きっとバクラと居るからだろう。
彼の力強さは自分にとって大きなものだった。
最初に目を覚ました時は心臓が止まるんじゃないかと言う位に怖くて、
でも本当は目と目を見合って話そうとする優しい人で、不器用で-・・・
其れがきっとバクラと言う人間なのだろうと思う。
そう考えると彼も意外と可愛げがある様に思えてきて
可笑しくて笑ってしまう。
「なぁに笑ってんだぁ?」
不意に話しかけられビクリとする。
何時から其処に居たのか、バクラが怪訝そうに此方を見ている。
こんなに近付かれる迄気付かないなんて、
自分は何て鈍い(にぶい)んだろうと思う。
緩んだ口元を隠そうと手をあてがおうとしてバクラに手首を掴まれる。
「隠すなよ。笑ってる方が可愛いぜ、お前。」
バクラの言葉の意味が理解できなくて数分瞬きする。
「かわ、いい・・・?」
バクラの言葉を反芻して顔が熱くなる。
恥ずかしくて視線を下に向ける。
「あ、あの・・・何時から居たの?」
「先刻から居たぜぇ?」
「先刻って・・・具体的に何時からの事?」
「時間で言うと5分前から居たな。」
5分も前からずっとバクラが自分の目の前に居たのに
話しかけられる迄気付かずにニヤニヤしていたのを見られたと思うと
余計に恥ずかしくてバクラの顔を見れなかった。
「今日はもう、御仕事終わったの・・・?」
そう、今日は何時ものように朝食の後出掛けていったのだ。
バクラは一度出掛けると夕方迄戻って来ない。
其れは今迄狂う事は無かった。だからこそ油断したんだろう。
バクラ少し考えてから「どうも調子悪くて途中で切り上げた。」と答えた。
「体調、悪いの?」
「いんや。仕事の進行具合が良くねぇんだ。
こういう時はさっと引き上げて調子を正さねぇとならねぇからな。
調子が悪い時に無理すると効率が悪い。」
そう言ってバクラは自分の部屋に向かい、
「少し寝る」と言って部屋に入ってしまった。




部屋に戻ったバクラは胸が高鳴るのを必死に抑えようとした。
調子が悪くて家に戻ってみればリョウの見た事のない様な、
眩しい笑顔に見惚れてしまっていた。
直ぐに抱き締めてしまいたかった。
だが、何故そう思ったのか解らない。
抱き締めて、其れから如何する・・・?
そんな問いかけをしていたらリョウに話しかけて
彼女の手首を掴んで「可愛い」と思った事を其の侭伝えてしまった。
自分でも驚く程素直に。
抱き締めたい衝動を抑え込んで出た行動に内心ドキドキしていた。
数分放心気味のリョウの表情、言葉の意味を理解して頬を赤らめながら視線を逸らし
焦り口調で言葉を紡ぐ・・・先刻のリョウの反応は見ていて心揺さぶられた。
可愛くてもっと意地悪したくなるような何かがあの少女には有った。
リョウは視線を逸らしていて見ていなかっただろうが
其の時のバクラも恐ろしく頬が緩んでいたのだ。
人を殺す事でしか笑わない自分が其れ以外で違う感情を持って
笑っている事に少々驚いた。
リョウに出会ってからは驚く事ばかりだったが
今ではそれも悪くないと思う。
ベッドに寝転んで正体不明の感情が何なのかを考えていると
自然と自分はリョウの事ばかり考えているんだと気付く。
恐らく王宮への復讐の事と同じ位彼女の事を無意識に考えてしまっているんだろう。
何かを、ではなく誰かの事をこんなにも思ったのは初めてかもしれない。
そう思うと何だか恥ずかしくなって寝返りを打つ。

数時間後、リョウがバクラの眠る部屋に行くと
この上ない程気持ちよさそうに眠っているのが見えた。
夕飯が出来たから起こそうと思ったのだが
こんなにも気持ちよさそうに寝られていては起こす事を躊躇う。
リョウはバクラの眠るベッドの傍迄近寄って彼の寝顔を見詰める。
改めて見ると寝顔はとても可愛らしい。
切れ長の睫毛に形の良い唇・・・。
起きている時、もっと柔らかい表情をしていれば良いのにと思って
髪を撫でようと伸ばした手を掴まれる。
「え?」
突然の事に固まる。
そして更に掴まれた腕を引き寄せられ、バクラの上に倒れ込む。
「!?」
あまりの出来事に混乱する。
「よぉ。」
頭上からした言葉に視線を上げると悪戯そうに笑うバクラが居た。
「バクラ君、寝てたんじゃなかったの?」
「お前が部屋に入って来てから起きてたぜ。」
「狸寝入りなんて酷いよ・・・・」
「狸寝入りじゃねぇよ。お前の気配で起きたんだから。」
「・・・バクラ君の御仕事が何なのか気になるね。」
「ヒャハ、そうかい」
バクラは機嫌が良いらしくリョウの手首を掴んでいる手の反対側の手で
リョウの背に腕を回して抱き締める。
「あ、あのね、夕飯が出来たの。
だから・・・その、起こしに来たんだけど・・・」
「んー、もうそんな時間か。」
バクラの腕は未だリョウの体を束縛している。
リョウの鼓動が高まる。
「んじゃあ飯食うか!」
そう言ってバクラはリョウを抱き締めた儘上体を起こし、
リョウを抱きあげる状態で移動する。
「バ、バクラ君!?」
「あー、気にすんな。俺がそうしたいだけだしよ。」
「え、えぇ!?意味が解らないよ!?」
「解らねぇで結構。さぁ飯食うぞ!!」
今日のバクラのテンションの高さは何なんだろうと思いつつも
こんな日も悪くないなと思う。
リョウが大人しくなったのに満足してかバクラも笑っている。
今度は悪戯な笑みでは無く、無邪気な笑みだ。
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朝起きるとリョウが何時ものように朝食を作っていた。
ぼんやりとした思考を覚ますべく頬を軽く叩く。
昨日の夜も以前と同様に寝室でリョウと会話して
今夜は此処で寝るよう促して・・・・
其処迄考えてはっとする。
幾らリョウの事が気になっているからと言って懐を自ら許すとは・・・
今迄誰かと寄り添い合って寝るなんて事が家族以外に居なかった。
嘗て母親が生きていた頃、幼かった自分を優しく抱いて寝かしつけてくれたが
その温かさも王宮の平和の為に奪われた。
以来バクラはずっと独りで生きてきた。
他人との触れ合いも無かったし、温もりを求める様な事も無かった。
そんな自分が見ず知らずの人間に懐を自ら許したと言う事実にも驚いたが
同時に自分は弱くなったとも思った。
他者への関心なんてものは強弱以外に何もなかった。
リョウは見るからに弱そうだし、関心を抱く様なものなんて何もなかった。
只、本の少し綺麗だったと言うだけ-・・・。
其れでもバクラは自分が弱くなって迄知りたいと思った少女の事に
今迄以上の関心を持った。
彼女に記憶は無いらしいので過去の事はあまり聞き出せないだろうが
此れから先の事はじっくり考えて行けば良い。

寝室から出ると食卓には既に料理が並んでおり
後は食べるのみとなっていた。
「お、おはよう・・・」
席に座っていたリョウが伏せていた視線をバクラに向けて控えめに言う。
「・・・はよ」
リョウの挨拶に短く応答するとバクラも席に座って
並べられた料理を食べ始める。
食事中は御互い無言だった。
昨日の今日で明るく会話等出来る訳も無く御互い黙々と食事をした。
料理を食べ終えるとリョウはいそいそと食器の片付けをする。
後片付けをするリョウを見ながら「今日は出掛けずに家に居ようか・・・」と考えた。
毎日のように出掛けてリョウを家に1人残した儘では当然碌に触れ合えるわけも無い。
偶にはこうやって家で過ごすの良いだろう。

昼前になってリョウが不思議そうにバクラに尋ねてきた。
「今日は出掛けないんですか・・・?」
バクラは今更かとでも言いたげな表情で「ああ」と返す。
リョウは更に驚いた表情をして「そうですか。僕、御昼の準備してますね」と言うと
料理を作り始めた。
午前中特に何か有った訳でもなく、家事をこなすリョウの姿を
じっくりと眺めていただけで会話らしい会話等全くしていない。
何時も朝食を済ませて直ぐに出掛けて行ってしまうバクラが
今日は昼前迄家に居る事を不思議に思いつつ
漸くリョウから其れを話題に出された訳だ。
リョウが昼食の準備を済ますと条件反射と言わんばかりに食卓に着き食事を始める。
思えば夕暮れ迄帰宅しない自分にとって家での昼食は初めてかもしれない。
リョウが来る迄は家に帰らない時だって有った。
だが今はこうして毎日家に戻っている。
思い起こせば生活自体が変わっていた。
1人分だった食器が2人分になり、汚れていた部屋は常に綺麗な状態で保たれ
食事もバランスをちゃんと考えたものになった。
同居人の影響力は凄まじいものだ、とバクラは思った。

昼食も無言の儘終えて、朝食同様にリョウが手際よく食器を片づけて行く。
此の後の数時間はリョウにとっての休憩時間になる。
バクラは無言でリョウが部屋の隅に腰かけるのを見てリョウに手招きする。
「え?」
「こっち、来いよ」
リョウはぱちぱちと瞬きをすると下ろした腰を持ちあげ
バクラの座る椅子の近く迄来ると「何でしょうか?」と言う表情をしてバクラを見た。
「まぁ座れよ」とバクラに促されて何処に座れば良いのかと考えた末に床に腰を下ろす。
リョウは行儀良く正座をしてバクラの方を伏せ目がちに見る。
そんなリョウを見て本の少し笑ってから言う。
「リョウ、お前何であんなに怯えてたんだ?」
バクラの言葉にビクッと体を震えさせながら消え入りそうな声で呟く。
「僕・・・他人に触れられるのが怖くて・・・」
「他人に触れられるのが怖い?何でだ?」
「その・・・具体的に何でかは解らないんですけど・・・体が勝手に拒否して・・・・」
其処迄訊いてバクラはリョウに記憶がない事を思い出す。
記憶の具体的な部分が解らないのは当然だ。
リョウはバクラと出会う迄の記憶がないのだから何故だと訊かれても答えようがない。
今朝あれだけ考えていたのにも関わらず自分で解りきった事を聞いてしまった。
バクラはがくりと頭を下げると大きく溜息を吐いて更に続ける。
「じゃあ別に俺様を怖がっていたっつう訳じゃねぇんだな?」
その言葉に困ったような顔でリョウが視線を逸らしながら小さく言う。
「その・・・最初は少し怖かった・・・です」
リョウの言葉に胸が痛む。
其れもそうか。
目を覚ましたらこんな身なりの人間が傍にいて怖がらない人間はいない。
本の少し眉間に皴を寄せているとリョウの言葉が再び聞こえてくる。
「でも・・・こんな僕を助けてくれて・・・何も酷い事しないって解って、
本当は優しい人なんだって思いました。」
『優しい人』と言う単語にぴくりと片眉が動く。
優しいなんて言葉は自分に無縁だと思っていた。
目の前の少女の言葉に嘘は無いだろうが、残虐非道な盗賊王と呼ばれる自分には
何処か違和感の有る言葉だった。
「本当にそう思うか?俺はお前に家の事全部押しつけて
出掛けて飯喰らってるだけなんだぜ?此れの何処が優しいんだ?」
「優しさの表現なんて一丸には言えませんよ。
きっとバクラ君の優しさの表現は此れなんだと思います。」
こんな何処から見ても悪党の様な奴を此処迄褒めるリョウに
何故だか視線を逸らしたくなってしまった。
目を逸らしてはいけない・・・ちゃんと目と目を向き合わせなければ・・・・。
バクラは椅子から立つとリョウの目の前に屈んだ。
「そうか・・・そんな事言われたの初めてだから俺様にゃ解らねぇや。」
そう言ってリョウの髪を撫でる。
リョウは自分が多くの人を傷付けていると言う事は一切知らない。
知る必要も無い。
だが、若しも何時か知られてしまったら彼女は自分を如何思うだろう?
他の人間と同じように冷たい目で見るのだろうか?
他の人間と同じように自分から離れて行くだろうか・・・
目の前の安堵と不安に表情を曇らせつつも出来るだけ表情を柔らかくする。
此の先如何なるかなんて解らない。
今は目の前の少女に少しでも近付く事だけを考えよう。
視線を落とすと本の少し、リョウの口元が綻んだ気がした。闇人格×表人格女体化アンソロジー【右隣の女の子】 ばくらプチ告知サイト

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あの晩以来、バクラはリョウについて考えるようになった。
最初は彼女を助けた見返りとして彼女を奴隷にしてしまおうと思ったが
彼女の自分への怯えが途轍もなく不快に感じてからは
もう奴隷として扱おうとすると言う考えすらも頭から消え去っていた。
使えるものは最大限使ってきたバクラにとって
其れは未知の感覚だった。
他人を知ろうとすると言う思い自体が無かったのだから当然と言えば当然だが。
途切れ途切れのリョウの謝罪を訊いて彼女を抱きしめて・・・
自分は彼女の心に触れてみたいと思った。
知りあって見たいと思った・・・。
恐怖に震えて謝り続ける彼女が気がつけば自分の腕の中で寝息を立てているのを見た時
無意識のうちに心が和んだ気がした・・・。
この感情の正体、其れを抱かせるリョウと言う存在への関心は
日々増え続けるばかりだった。

次の標的の情報を手に入れるべく街に調査に行っていた時
不意に目に入ったのが男女が楽しげに寄り添い合って会話すると言う姿だった。
今迄目にしなかった訳ではないが、今のリョウとの同棲生活の事を考えると
其の男女組への興味も湧かなかった訳では無かった。
自分が指名手配されている盗賊である事を悟られない様に
穏やかに声をかけてみる事にする。
「其処のアンタ達、少し良いかい?」
バクラの問いに男女組が振り返る。
「はい、何でしょうか?」
女性が訊き返す。
「アンタ達は御互いの事、知り合ってるのかい?一緒に居て楽しいのかい?」
バクラの突拍子もない問いに2人揃って赤面する。そんなに恥ずかしい質問だっただろうか?
「え、ええ。それはもう!隠し事1つ無い位に知り合ってます!」
ぎこちなく、女性がそう答えると今度は男性がその言葉を引き継ぐように言う。
「勿論、一緒に居て楽しいし、此れほどの幸せって無いと思います!
何しろ僕達、今度結婚する予定ですので・・・」
「ちょ、ちょっと!!あんまり惚気ないでよ!!恥ずかしいじゃない!!」
男性の言葉に女性が照れ隠しに言葉を発するがバクラにはその女性の言葉よりも
男性の言葉が脳内に何度も響いていた。
此の2人は本当に御互いを大切にしているのだろう。
其れだけは理解出来た。
そして最後に2人に問うた。
「そんなに親密になるのに秘訣は有るのか?」
男性が目をぱちくりさせてバクラに問う。
「若しかして、気になる女性がおられるのですか?」
「ああ、少し気になってな・・・けど、如何いう訳か距離をおかれちまって・・・」
気になっている、と言うのは事実だったので否定せずに
親密になる方法を訊き出そうとする。
「そうですか。そういう時は自分から近付いて行って安心させてあげると良いと思います。」
「そうそう。女の子って少し優しくされると気持ちが傾くんです。
勿論、嘘偽りない優しさに、ですけど。其の子と上手くいくと良いですね!」
「ええ、本当に。僕たちのアドバイスじゃ頼り無いですが、頑張って下さい!」
2人の声援に「此方こそアドバイス有難うよ。アンタ等も御幸せにな」と返し
再び2人が赤面しているのを確認してからその場を去って行った。


其の日の晩、リョウは何時ものように出迎えてくれた。
自分に怯えているのにも関わらずこうして毎日出迎えてくれるのは
何だかこそばゆい感じがしていた。不快ではない。
食卓に並ぶ夕飯を頂きながらリョウに「話が有る。後で寝室に来い」と言った。
食事を済ませてから寝室でリョウを待って居ると
直ぐにリョウは寝室に遣って来た。
どことなく緊張しているのが解る。
「まぁこっち来いよ。んなトコ突っ立ってっと疲れんだろ?」
「は、はい!」
バクラの言葉に体をビクッとさせながら返事をし、バクラの隣に座る。
「んなに緊張すんなよ。別にとって食おうってんじゃねぇんだ。」
リョウの体の震えを落ち着かせようと言葉を発するが
未だ緊張がほぐれる様子も無い。
それもそうか。
本の少し会話を交わしただけの相手に安心感を抱けと言う方が無理な話だ。
だが此処で諦めてはいけない。
今日男女組から得たアドバイス通りに接すければ若しかしたら
少しは心を開いてくれるかもしれないのだから。
バクラは先ずリョウの手を握る。
リョウは驚いたような表情をするが其処には触れず居る。
「なぁリョウ。お前が自分の事が解らねぇなら深く追求しようとは思わねぇ。
けどな、少し位は其の警戒心を解いちゃあくれねぇか?」
リョウの低めの体温を感じてバクラはその手を握り過ぎないよう気遣いながら続ける。
「お前の作る料理は其処等の料理人の数千倍旨くて、
部屋だって此れでもかって位綺麗に掃除されててよ・・・
お前の此の徹底した仕事ぶりには何時も感謝してる。
俺の事怖がりながらもちゃんと出迎えてくれて・・・見送ってくれて、有難う」
バクラの突然の言葉にリョウは目を丸くする。
反応に困っているのか言葉を発せられないでいる。
「けどよ、怯えられてる事だけが不満だった・・・。
こんなナリだから仕方ねぇし、怯えられるのなんて日常茶飯事だ。
怯えられ過ぎて慣れてきさえする。
でも如何してかお前にだけは、怯えられると嫌なんだ・・・」
バクラのその言葉に申し訳なさそうにリョウが俯いて
謝罪の言葉を述べようとした時だった。
「謝るな。お前は何も悪い事なんてしてねぇだろう?なら謝る必要はねぇ。
後、其の堅苦しい言葉遣いも止めろ(やめろ)。
俺、そういうの苦手なんだよ。」
此処で漸くリョウの口が開く。
「はい、解りました。色々気を使わせてしまって済みませ-・・・」
「だぁから、その言葉遣い止めろって!」
「あ、えっと・・・癖で・・・少しづつなおしていきます」
リョウの言葉に本の少しだけ笑む。
誰かにこうやって触れたのは恐らくリョウが初めてだろう、
そう思いながら暫しリョウを見詰めていた。
 
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